★魔術師のタロット:「#0. The Fool フール」レオン先生講義 Part1

 (#0. The Fool フール)

 

 この「魔術師のタロット」では、この0番ですね、そしてまた1番。これらが特別な、全体を統括するカードということになります。伝統に倣ってるカードではありますが、ここでは絶えず人物像が、エネルギーを持ち、われわれと対話する、われわれと交流する。そして、私たちはこの0番という存在と付き合えば付き合うほど、お互いにエネルギーが浸透し、莫大なこの世界とは違う大宇宙、あるいは異世、いわゆるアザーワールドですね。その異なる世界からのエネルギーがわれわれに流れ込んでくる、流入してくるということです。これは、ご自分で体験していただければわかる通り、ご自分でも仲のいい友人とか信頼できる人間関係ができれば、その人を通して大きなエネルギーが流れ込んできますね。こんな人と知り合ったからこんな気持ちになれたとか、こう考えればいいんだとか、私もやってみようかなという気持ちになれたとか。そういうことが、やっぱり本ですとか、テレビとか、あるいはインターネットとかという例もありますが、直接会った人物から受ける影響は、それらよりもはるかに大きいだろうと思います。

 

 それはやっぱり、私たちは生きているからですね。私たちはロボットでもなければ、生きているからこそ、生きることは刺激を与え合って、そして発展していく、伸びていく。いい友達ができるとか、いい人物に出会うとか、それをきっかけにして、そうだ卓球の選手になろうとか、ああこんなことで満足していてはいけないとか。そういうインスパイアされるとか、気持ち、心、エネルギーを受け取る。そしてフールは「霊」ということですね。宇宙全体と関わります。というよりも、フールは宇宙全体を創造した、つくった当事者ですね。そして、それをこの世界の中にやってきて働く姿がメイガスです。したがってメイガスは、占星学では水星に対応するということになります。水星というのは、太陽(大宇宙と切っても切れない関係にある自分自身)の莫大な能力を具体的な必要性に適応させる。そしてコミュニケーションや知性、情報や知識や、そして関係をつくることによってさらに発展させることです。

 

(#1. The Magus 使徒)

 

 そもそもコミュニケーション自体は、関係があるのでコミュニケーションが可能になる訳です。これからだんだん学んでいく中で自覚してもらいたい、発見してもらいたいのですが、私たちは自分では常日頃はそう思っていないのですが、私たちが存在することを「関係内存在」と言います。関係があるので私たちは存在する。これからたびたび何度も出てくると思いますので、「関係内存在」という言葉を覚えてください。関係のほうが優先する。個人ではない。関係があるので生きられるということです。私たち自身がすでにそうでした。父親と母親の関係がなければ自分という存在がないのですが、どっかで忘れてますね。誰々の子であるとか、山田家であるとか。よくよく真実の姿を見れば、私たちの存在は関係内の存在であるということです。もちろん事件的に捉えると、ある事件によってひょっとしたことから生まれるというのがあるのかもわかりませんが、正常のスタイルで考えれば、父親と母親に愛情がある、信頼関係があり、関係があったので生まれてきます。アクシデントや事件や襲われるというようなことがなければ、通常はそういうスタイルですね。したがって事件が多くなれば当然関係内も壊れていく、社会も壊れていく、全体が壊れていくってことになりますが、ちゃんとした関係があれば子供も育つ、教育もうまく進展していく、社会も正常に発展していく。理屈抜きに「そんなことはやめようね」ってことが通用するんですが、関係内存在が壊れていくと、「なぜそれをやめるんですか?」とか、反抗したり突っかかってきたり、関係が壊れているからですね。見失うことになりますね。そのことをよく理解してください。

 

 したがって別の言い方をすれば、人間は「関係内存在」であるということです。宇宙の関係によって生まれたのであって、人間がぽつんと生まれていない。関係がなければ人間も存在しない。つまりあなたや私だけじゃなくて、人類自体が存在しないということですね。これは大宇宙を考えていただいてもわかります。地球は存在します。地球は存在していますが、地球なんて単体は存在しません。太陽系があるので存在してますが、太陽系がなければどっかで衝突してるか爆発してるか、ただただどっかに飛び続けるか流れるか、無の暗黒へ消滅する。例えば亀は、およそ1万匹生まれますが、そのうち9,999匹は無の暗黒へ消滅していく。生まれはしたが、関係が築けないからですね。軌道、生きるべき道(パス)を持たない。軌道があるので、地球も存在し、木星も存在し、ただ好き勝手に空間を飛んでいません。まあそれがひとつの例えですね。イコールではありませんが、地球や火星や月に意識があるとは思えないのでイコールではありませんが、ひとつの原子を含めた宇宙的なエネルギーの働きが存在するという意味では、類似している。無関係ではないということですね。まあそういうことからも占星学、占星術のようなことも成り立ってくる訳です。占星術イコール人間ではありませんが、馬鹿にはできない、無視はできないこともあるということですね。

 

(関係内存在:ジルタロット)

 

 この「関係」という問題ですね。この関係という問題を、私たちのはるか前から探求した人々がいて、そしてそれは神話という形でこの世界をつくり、民族をつくり、やがて国家をつくりという形で私たちは発展してきている訳です。現在の姿がある訳です。したがって原点まで遡ろうとする時、私たちは神話まで遡るという作業を通して、人間っていったい何なのか、自分っていったい何なのか、本当の生きるって何なのかということに近づこうとする訳です。神話に根掘り葉掘り詳しくなるとか、別に神話学者になる訳ではありませんが、いかに生きるべきかという原点ですね。ルーツですね。そこを神話と自分をぶつけることを通して根源から発見しようとしている訳です。私たちはそういう作業から始める。したがっていろんなタロットカードはあるんですが、神話の原理を取り入れたトートのタロットカード、それを私たちは教材として使う訳です。よろしいでしょうか。

 

 「関係内存在」ということ、関係があるので自分が存在する。したがって私たちもまた関係をつくらなければ生きているとは言えません。一人ぼっちで山の中とか、ずっと一生部屋に閉じこもるとか、監獄で暮らすとか、それでは生きるとは言えない。死んでるとは言わないけど、いわゆる私たちは人間として充実し、人間的なエネルギーを使い、自分という生命を納得できるほどに開き、確かにこの世界に寄与している、役に立ったと実感できる。ひとりでいるだけでは、この創造運動、創造活動の一端を担ったとは言えないと思いますね。生存したってだけですが、生きることはやはり創造することですね。創造すると私たちは充実します。ちっちゃい時ですらも、お父さんかお母さんの役に立ってみんなが喜んでくれると充実します。あー、買い物してきてあげれて良かったとか、今日なんかおじやを作ってあげただけでも良かったとか、充実感を感じる訳ですね。そのことを「創造的」と言います。ちっちゃい時と違って、単なるお手伝いだけではありませんので、人生全体をひっくるめると創造的ですね。一番具体的には、この創造活動とは当然仕事のことです。仕事に関わってくる訳ですが、「創造としての仕事」です。つまり衣食住、家賃を払うための仕事、今日めしを食うための仕事って意味ではなくて、この世界に何らかの関わりをもって、自分のエネルギーを使い、生きがいを見出す、役に立った私はこの世界を支えてる、この世界の一翼を担ってるという充実感ですね。それをキャリア、天職とかですね、使命とか、そういう言い方をします。人は結婚しなくても生きていけますが、キャリアがないと生きていけません。

 

 そしてもうひとつは、「コ―リング」という問題があります。自分は卓球やるために「呼ばれている」と自覚するところまで行くと、卓球に一生捧げられる。自分は野球に、自分は絵を描くことに、自分は役者として、自分は専業主婦として、自分はこういう知的障害者たちを育てる保母としてとかですね、「呼ばれているんだ」と自覚するところまで追求していく。そうすることによって、初めてキャリアは自分自身になります。自分自身の外側、ほんとに自分が外に現れた、自分の肉体と同じですね。私の考えていること、私の求めていること、私の努力がキャリアに現れる。キャリアがないと自分というものが現れようがない。せいぜい日記を書くぐらいなもの。ブログとかTwitterを書くぐらいのことですが、まあ、そこではあんまり自分が真剣に見えません。Twitterって別に創造活動じゃないですね。今日の美味しいごはん、こんな素敵でしょとかね、写真撮っただけですから。あ〜、写真撮るだけで一生終わるのかな、まあそこまではあんまり考えないでしょうが、面白いからやってるだけですから、人生にはなりません。そのうち飽きます。みんな飽きます。でしょ。

 いまTwitter、いま何とか、たぶん数年経つと飽きます。その前はブログでした。その前は掲示板でした。その前は単にサイトを起こす。みんな飽きちゃったので、次またブログだね、別にまたTwitterだね、次にまたyoutuberだね、そのうちそれもまた飽きちゃいますね、しばらくすると。今はまだ飽きないだけですが。これが自分の生きる活動だなんてあんまり思わないですね。ソニーがどんなに立派な会社だって、ソニーに命懸けないですね、創業者でもあるまいし、命懸けちゃダメですからね。仕事終わったらさっさと帰って自分の一番充実する仕事、楽しいって思うことをやる。それじゃなきゃダメですね。私生活をなげうっても東芝のためにって、なにも別に誰も有り難がってませんね。よろしいでしょうか。

 

 「関係内存在」をつくる、ということですね。ただし関係内存在には、当然、向かっていく方向、目的がなければなりません。目標ではありませんが、目標というのは年収が3000万になるぞとか、金メダルとるぞとか、それが目標ということですが。目的はこんな演劇をやりたいとか、こんなことを演劇を通して表現したいとか、ただ作品をつくるんじゃなくてこういう作品をつくりたいとか、それが目的ですから。中身ですね。(「目的」は自分自身ですね。目標は他の人でも達成できる。)

 目的があっての関係内存在です。目的があっての関係内存在なので、目的がないと、父親と母親はひょっとすると子供をいじめるかもわからないし、父親と母親は別れていくかもわからないし、場合によっては殺し合いするかもわからないし。中身がないと関係内存在ではない。関係内存在とは、あ〜、誰かと付き合ったとか、結婚したから関係内存在とかですね、そんなことを言ってる訳ではありません。社会にはこんなに関係がありますが、それらは別に関係内存在ではありません。市役所行って色々相談しても「そこまでは市役所の仕事ではありませんよ」とか、警察行くと「それは私のやることじゃないのでそこまではできませんよ」とか、ガードマンが「一日中あなたの警護をできませんよ」とか、そうなりますね。関係内存在じゃない。全面的には関わっていません。生きることを全面的に共生して新しいものを生み出すことを、「関係内存在」と言うんです。人生のあの部分この部分ではありません。だから別の言い方では、結婚とか絶対的結合とか絶対的結婚とかっていう言い方をしますが。まあ「結婚」っていう言葉を宇宙論としてよく使いますので、人間の結婚という風に勘違いしないようにしてくださいね。

 

(Princess of Wands & Princess of Cups)

 

 タロットはこの世界をプリンセスとして捉えますが、それは宇宙と結婚するために、まだ未熟なのでプリンセスなんですね。まだ少女なんですね。やがて成長すると宇宙と結婚する。そしてやがてクイーンになっていく。まあまだメジャーの一番最初ですから、マイナーカードに行ってませんから。マイナーカードにはプリンセスというカードがありますが、プリンセスは「この世」ですね。この世はプリンセスである。プリンセスのカードというのは、どれもみんな揺らいでいる。「情欲」に揺らいでいるんですね。この世の本質は情欲だからです。したがって、まだ私たちは学んで成長しなければならない訳です。成長あるいは成熟する訳ですね。情欲に囚われた薄っぺらな人生を、はぎ取る成長をしなければならない訳です。情欲を完全に脱ぎ去ると、それが「成熟」です。秘儀参入者(求道者)はタロットを通してその訓練をする。そういう風に捉えながら人生を考えていくと、今までとはちょっと違った角度からものを見始める、ものを考え始める。そうするとこのフール、タロットの霊と言われるこの存在ですね、これに近づいてくってことになります。

 

 フールは「タロットの霊」とも言います。フールというのは、これはカモフラージュです。運命学というのは考え、そしてそれを訓練して身に着けるものなので、運命学というのは神秘学ですね、だから、あんまりそれは覚えないようにするんです。覚えられたものは死んだ概念です。フールというのは「霊」で、これは実は『Full』ですね。完全性とか十全性。フルバージョンとかのフルですね。完全性とか十全性とか、十分でもいいですけどね。まったく欠けたところのない存在。そこからくる言葉ですが、「馬鹿ですね」ってことですね。この世の人間から見れば、それは馬鹿ですねってことですね。キリストなんてのは乞食みたいなもんですね。仏陀もだいたいホームレスみたいなもんですね。だいたいこの世から見ればそんな存在なのですが、じゃ彼らは困ってたのか。別に困ってはいなかった訳ですが、この世の人たちから見れば、別に肩書つけた訳でもなんでもない。なんだ道路っぱたの人か、ぐらいのことですね。まあそれはともかくとして、そういうフルっていう言葉のカモフラージュなんだということですね。フルを覚えたので、あ〜俺はもう完全だぞ、十分だぞ。人は覚えちゃうとそうなりがちになりますが、そうではない。野球を覚えるとすぐホームラン打てそうになりますが、いざバッターボックスに立ってみると「うわー、速くて球が見えなかった」とかね。覚えただけでは話にならない。まあそういう意味で、生きるというのはスポーツに似ていて大変です。絶えず訓練する、練習する。

 

 全体的な訓練をすれば、スポーツの選手も素晴らしく生きられるとは思いますが、まあスポーツは人生の中では部分的なものですね。つまり卓球だとか、スケートがとか、そういう限られたものの練習ですから、部分的な訓練ですから。そういう意味では、それを通して生きるってことのヒントを掴む人もいたりはするんですが、逆に転落する人もいる訳ですね。薬物にはまる人もいるし。選手としては立派だったけど、記録は残ってるけど、あんなになっちゃったということもある訳ですね。

 

(聖杯のタロット:タロットの霊)

 

 はい、フールですね。したがって「完全性」です。このカード、完全な存在を表す、完全な領域にいる、そのくらいにまず、考え方として考えといていただくといいと思います。したがってそこにキーワードとして、「いつでもどんな困難にも必ず救いの力をもたらす」、これはわかりますね。フールは完全な存在なので、いつであろうと、どんな時であろうと、必ずやってくる。見放すことはない、落ちこぼれることはない、フールがいないってことはない。もちろん関係をつくっていっての話です。何度も言ってる通り「関係内存在」ですから、フールと関係もないのに助けてくれる、知りもしないのに助けはしませんからね。知り合いなのでほっとけませんということになるんです。タロットとの関係を作ることを通して(それはフールとの関係を作ることですが、わたしたちは視覚化ワークによってそれを実現します)、それがまず私たちがタロットを学ぶ一番大きい目的です。宇宙そのものと結びつくことによって、その関係内から生じた自分の目的を実現していく。自分の目的を通して、この世界を創造する、つくりあげていくっていう一端を担っていくということですね。それが私たちがタロットを学ぶ目的です。そのなかに、占いという一分野もある訳です。占うことによって悩んでいる人、迷っている人、行き詰まっている人の手助けをするってこともある訳ですが、占いが別に最終目的ではありません。その中の一部分です。それ以外にもっと大きな、たくさんのタロットを通して考えること、やるべきこと、使えることがあるのです。ここまで、概要よろしいでしょうか。

 

 

タロット王国

筆記:森下由香

 

 

 

 

★2020年 春期『魔術師のタロット講義』の筆記より

★この春『魔術師のタロット講座』がスタートしました。

今回は、レオン・サリラ先生の解説から「イントロダクション」としてご紹介します。

 

 

レオン•サリラ

 

 

【魔術師のタロット 講義筆記より】

今日からトートタロット講座に入っていきたいと思います。

まずは、「魔術師の神殿」についてです。

トートタロットを、魔術師の神殿という形態に組み立てて学ぶシステムを、「魔術師の神殿体系」と名づけています。

タロット王国では、仕組みを理解しやすくするために名称付けをしている、という風にお考えいただけたらと思います。

 

このトートタロットを命題的に解明していく、解き明かし、かつ身に着ける、そのための1つの手法として、私たちは「7つの法則」としてまとめました。

 

このタロットは、「イスラエルの知恵」と言われている「カバラの宇宙論」に基づいて構成されています・・・そのカバラは「口から耳へ」という言葉ですが、ヘブライ語です・・・そういう意味では、もともとそれは口伝です。口から耳へという伝承として、昔はいま私たちが知ってるような紙の技術とか、ましてインターネットとか、そのようなものが存在したわけではありませんね。

 

東洋では竹の木端に文字を書いたり、西洋だと羊の皮に文字を書き込んだりしていました。文字も印刷するわけではないので、通常書き写し、書き写し、伝承していくわけです。書き写しを繰り返す過程で、どうしても誤字が入ってしまったり、読み落としが起こったりで、誤りも出やすいってことになるんですね。

 

逆に変な話ですが、誤ったことによってより深く物事がとらえられたとか、「あーそうだったのか」ということも発見されたりすることがあるのですが、いずれにしてもベースになってるものが「イスラエルの知恵」ということです。

 

なぜ「イスラエルの知恵」をこの作者は、あるいはこの作者を取り巻く集団が、それを採用したのかということは、私たちが人間として自分を自覚する、あるいは確立する、その原点に実際の出来事として、実際の歴史、もちろんイスラエルの精神史の話ですが;

現代でいうと精神史、昔は宗教史または文化史ということになるかもわかりませんが、いずれにしてもヨーロッパ社会に強大な影響を与え、現代の社会をつくる、ユーロ共同体なんかをつくる背景にあるものが、「イスラエルの知恵」、およびギリシャ哲学だからなんです。

 

*『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』パトモス島の福音書記者ヨハネの図。

 

その「イスラエルの知恵」を具体的に学ぶ、ひとつの内容として、このトートタロットの場合は「ヨハネ黙示録」という、新約聖書の一番最後に出てくるヨハネ教団、キリスト教のヨハネ教団が遺したとされる「ヨハネ黙示録」の世界観とタロットとを結びつけました。そうすることによって、現在の自分たちの立ち位置をはっきりと理解することと、その限界を超えた未来を創造できる「魔術的な武器」(今の言葉ではツール)になり得るんではないかという、そういう構想がトートタロットの背景にはある・・・少なくとも私はそう思っているわけです。

 

 

『魔術師のトート・タロット』

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テキスト『魔術師のトート・タロット』P.61〜

さて、このトートタロット全体は、「7つの法則」としてとらえることができると私は思っているわけですが、この「7つの法則」は、ヨハネ黙示録の「7つの封印を解く」という考え方に対応させた「7つの法則」なんだということです。

 

ヨハネ黙示録は、未来を解く鍵は「7つの封印」それをいかにして解くか、そういう未来の考え方を示唆して終わっているわけですが、それに対応させたものとして、このタロット全体を解いていく。そういう方法を優しく言えば、まとめた、確立させたということですね。

 

そしてその中で、第1の法則として、必ずしも正確ではありませんが「魔術師の神殿体系」を確立すること、そしてこの第1の法則から第7の法則まで、それをまとめて魔術師の神殿体系をスキルし、そして身に着けるという学習方法を確立したということですね。

 

 

「イスラエルの知恵」であるにもかかわらず、神話の中で、神話の主役たちは大半がエジプトの神話の登場人物ではないか。

たとえばイシスであったりオシリスであったり、あるいはヌイトであったり、そしてトートという言葉自体もトトですね・・・エジプトのトト神です。そこからとった言葉であったりするわけですから、おかしいじゃないかという風に思われるかもしれませんが、いわば「イスラエルの知恵」というのはエジプトの宗教思想(エジプトの場合は、古代魔術思想を含みますが)とそのエッセンスをまとめ、さらに発展させたものという風に考えていただいたらよろしいかと思います。そういう意味では神観としては、「イスラエルの知恵」が基本になりながら、出典の最初はエジプトから始まっていくということです。

 

 

ルーブル美術館「オシリス神の家族

 

「イスラエルの知恵」が集大成されていく、その一番具体的な、私たちが知っているものは、モーセのエクソドス、「出エジプト」と言えるわけですが、それがなぜ画期的であったかということは、人間類、あるいは民族が、主体性を持った人間(Individuality)になる作業だからだということです。

 

それまでの人間というのはみな王政の元、王または皇帝の配下のもとに、他の人々は同列ではない、王政および王族は特別な人間ではあるんですが、他の人々は同じ人間扱いされない・・・奴隷であったり、あるいは臣下であったり、あるいは日本的に考えれば足軽であったり、そういうものの中で位置づけられ、それは現代ではピンとこないかもわかりませんが、ずっと代々継承されていく。

坊さんはずっと坊さんです・・・自分だけではないわけですね・・・奴隷はずっと奴隷。

そういう制度の中に閉じ込められていたわけですが、エクソドス、出エジプトをした意味は、王政の元ではなく「部族共同体」を形成する・・・エジプトから離れ、部族共同体を形成して、それを共通の土台にしてみんなが生きていく。

 

(神の律法が記された石板を地に投げつけるモーセ)

 

部族共同体という考え方は、現代の私たちの民主主義の最初の根本になった、土台になった人間の考え方であり、かつそのベースには、私たちは自由を根底にしてものを考え、そして体験し、そこに「これが自分である」というまとめをし、私たちの個人でいうと自覚の年代とかですね。

 

最初は、まだ言われるがままに色んなことをやってるわけですが、通常でいう成人とは、自覚し自分に目覚めていく、確立していく年代。職業はこれにするとか、自分はこういうところで生活する、仕事をするとか、こういうパートナーを選択するとか、そういうものを自由に決める。そして自由に決められるという、まあ言ってみれば、今の私たちには当たり前のようなことではあるんですが、人間は最初からそうであったのかというと、いやそう簡単ではなかった。長い時間をかけ、数百年、場合によっては一千年以上の時間をかけ、そして獲得してきているということです。

 

 

freepik.comより

 

俗にいうモーセのエクソドス自体が紀元前1250年代だとすると、イスラエル部族共同体が実際に確立するのが、紀元前500年前後ぐらいですから、そういう意味では800年くらいですね。800年くらいの年数をかけて、考え方はあったにせよ、それを実現するということに関しては幾世代をもかけた・・・そういう営みと生活づくり文化づくりが必要だったわけです。

 

まあモーセ自体はユダヤ人でありながら、エジプトの王族の子として育てられ、やがて自分は「そうではない」「エジプトの王族の子などではない」ということを知ってエジプトから離れ、かつ数十年間、まあ40年間位、パレスチナのある不毛な地帯で、私たちの今でいう訓練期間ですね、育成期間、あるいは練習期間、そのようなものを経過して、そして再びエジプトに戻り、このエクソドスと言われるものを敢行したということになります。

 

エクスというのは「外へ出る」。

ドスは「脱出する」ということです。

エクソダス、エクソドスの反対はエイソドスですが、エクソドスがあれば当然エイソドスがなければならない。単に脱出するだけではさまよえる何々(〜〜オランダ人とか)ですね・・・漂泊する人間になるだけですがどこにエイソドス「向かって入っていく」のか、「カナンに向かう」という具体的な目標。

 

ただ出エジプトをしたわけではなくて、「カナンに向かって脱出していく」という作業をやったわけですね。そして、そこで「部族共同体」を形成し、それによって1人ひとりの人間が、主体性を持った人間(Individuality)として自由に、創造的に生きていけるようにするためです。

 

従ってエクソドスには、必ずエイソドスが裏表としてつきまとう、付随していくわけです。そのことをずっと念頭に置きながら、このトートタロット、および「魔術師の神殿体系」というものに取り組み、学んでもらいたいという風に思うわけです。それが一体どういう意味なのか、どういう価値があるのか、どういう重要性があるのか、ということを絶えず念頭に置きながら、この学習を進めてもらいたいと思います。

 

 

タロット王国

筆記:森下由香

 

 

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★神話の原理に接続したタロットの霊(No4)

女 4月24日発売のレオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』から、
発売のカウントダウンまでに、本の内容を少しずつ紹介していきます。

第5章 偉大な知恵の宝庫
■ 神話の原理に接続したタロットの霊
 アレイスター・クロウリーは、すべてのタロットは「#0.The Fool フール」のカードに含まれていると言う。「#0.The Fool フール」は、ギリシア神話のディオニュソスとその妃アリアドネを描いたもので、そこには、タロットを求める者にはタロットの方から近づいて、その者を救うという意味が込められている。
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Ariadne in Naxos, by Evelyn De Morgan, 1877

(中略)
 トート・タロットは、どのような絶望の淵からでもタロットの霊を求める者を見放さないで救おうとする秘密の力を持っている。私たちがどのような人生の迷宮の中にいようと、タロットの霊は、アリアドネの糸を超えた、神の糸を象徴する四重の葡萄のつるの輪を投げかけ、私たちをタロットの霊の中にしっかりと包み込んでくれる。

(中略)
そして神話の世界でアリアドネが絶望の中、孤島でディオニュソスを見出したように、私たちもタロットの霊と結びつき、魂の根源的な不安を根絶やしにしていく。それによって私たちの生のすべてがまったく新しい世界へと導かれていくのである。

トート・タロットは、制作者たちがこのタロットの霊に直接導かれてつくった世界で唯一のタロットカードである。

*amazon 予約受付中! レオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』より抜粋。



 

★クロウリーが目指した新しい時代を創造するためのタロット(No3)

女 4月24日発売のレオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』から、
発売のカウントダウンまでに、本の内容を少しずつ紹介していきます。

*タロットの歴史の中でも、それまでのタロットとはまったく異なるトート・タロットは、アレイスター・クロウリーによって人間意識、考え方などが一段進化した、新しいアイオーンを誕生させる目的で制作された。それは、これまでの人間の生き方と考え方の限界を克服し、新たな存在状態を生み出すためのものである。

★2000年期にわたる3つのアイオーン
■第1イシスのアイオーン
紀元前2000年期に相当する文化の形成時代。人間の個人意識はまだ曖昧で、民族を統合するものとして民族神が考えられた。個人は民族に従属しながら、家系や民族的結合を人生の土台として精神を形成していた。・・・・・・・・・・・・



■ 第2オシリスのアイオーン
紀元後2000年期に相当する文化の形成時代。上から高圧的な態度で全体を統合する精神のパターンの時代で、父権制が強いためイシスの夫オシリスによって代表される。唯一神のもと、民族や血族を越えた世界的な理想を中心に求め、その理想を土台にして生きようとした。。
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■第3ホルスのアイオーン
クロウリーは1904年『法の書』の発表をもって新しいアイオーンの始まりとした。個人の内面的不安や恐怖を根絶やしにし、個人の精神の自主性と独立性を確立し、自由で創造的な人生を実現するための人間論、文化形成論を主張する時代意識である。
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*クロウリーのトート・タロットは1944年には完全に完成していたが、時は太平洋戦争末期である。
このカードが目的とする、「個人の完全な自主性と創造力の自由な開花」を理解するには、世界精神は熟してはいなかった。前述のようにトート・タロットができた時、『トートの書』が発行されただけであった。


*amazon 予約受付中! レオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』より抜粋。


 

★トート・タロットの誕生!(No2)

女 4月24日発売のレオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』から、
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第3章 トート・タロットの誕生
■ 20世紀の魔術師と呼ばれるアレイスター・クロウリー
 アレイスター・クロウリーは1875年10月12日、イギリスのヴィクトリア時代の最盛期に、シェイクスピアと同じウォリックシャー州レミントン・スパーに生まれた。特権階級の家に生まれた彼は、経済的に恵まれ、高等教育を受け、その階級の利点を享受して育った。彼の父エドワード・クロウリーと母エミリーは、キリスト教同胞派のプリマス・ブレズレンと呼ばれるキリスト教原理主義派のメンバーで、その方針に従って息子を厳しく育てた(両親はプリマス・ブレズレンの中でもエクスクルーシブ派に属し、規律は最も厳格だった)。

(中略)

 クロウリーの初期の学歴は、プリマス・ブレズレンの厳しいしつけによる古風な体罰、戦い、隔離によって教育された。20歳の時、彼は父親の多額な遺産を相続し、自分の考える通りに自由に人生を送れるようになった。自由の身をすべく、彼は自分の名前をアレイスター・クロウリーに変えた。

(中略)

Paolo de Matteis 『The Annunciation.』

 1904年4月8日、突如彼は聖守護天使エイワス(クロウリー自身が『トートの書』の中でほのめかしている通りタロットの霊フールのこと)の来訪を受け、新しい時代の到来を証明する『法の書』を3日間にわたる自動書記によって伝授された。
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*amazon 予約受付中! レオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』より抜粋。




 

★トート・タロット『ブックT』から始まったタロット革命 (No1)

女 4月24日発売のレオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』から、
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第2章 『ブック T』から始まったタロット革命

■ ゴールデンドーン・タロット
英語圏系タロットの中で、カバラ理論に基づいて制作されているトート・タロットは、その誕生の背景に、魔術結社ゴールデンドーン(黄金の夜明け団)の存在を無視して語ることはできない。
魔術結社ゴールデンドーンは、1888年3月1日に、ウィリアム・ウィン・ウェストコット、
マクレガー・メイザース、ウィリアム・ロバート・ウッドマンの3人によって発足した。
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そこから誕生したタロットカードがゴールデンドーン・タロットである



■ ライダー版タロット
ゴールデンドーンの流れの中で最も高い完成度を示したカードは、1910年にイギリスのライダー社から出たアーサー・エドワード・ウェイト制作のライダー版タロットである。
このライダー版タロットの出現によって、タロットの歴史は飛躍的に発展した。



■ トート・タロット
アレイスター・クロウリーは、ライダー版タロットでは解明できない決定的な問題点に突き当たり、
それまでのタロット理論のどのようなものにも満足できなくなった。
クロウリーが突き当たった問題とは、タロットが新しい精神的な時代を切り開く訓練体系に他ならないということである(彼はそれを「ホルスのアイオーンを実現する」ととらえた)。
そしてタロットを秘教と神話の原点にまで掘り下げて考え、その結果制作されたのがトート・タロットである。



*amazon予約受付中 レオン・サリラ『魔術師のトート・タロット』より抜粋。

 
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